2014年3月19日水曜日

櫻川観世音の伝説

櫻川観世音の伝説  (第二十一番 龍谷寺 関連)

 盛岡の地がまだ拓けない昔、松前へ通じる一筋の道が北山を通っておりました。 その道筋に、森におおわれて昼なお暗い松坂というダラダラ坂があり、龍谷寺の付近であったということです。

 どっぷり日も暮れたある日、一人の旅僧がここで夜を明かすことになり、観音様を松の根本に安置し、旅の疲れでいつしかうとうとしておりました。 かねて闇からその様子をうかがっていた数人の盗賊が、一刀のもとにと襲いかかりましたが、とっさにその気配を察した旅僧は、松の木の陰に身をひそめました。 その瞬間観音様は光と化し、それを目当てに切りつけた賊どもの刀は真二つに折れ、さしもの盗賊も驚き畏れ一目散に逃げ去りました。

 翌朝、旅僧が観音様はと見れば、勿体無くも御手は飛んで小川に漂い、御手の触れた芦はみな片葉になっていたといいます。

 かつて、龍谷寺境内をその小川(櫻川)が流れ、片葉の芦が風にそよいでいましたが、現在は埋めたてられ、その面影はもはやありません。 しかし、櫻川観世音ご尊顔は、今も昔に変わらずに慈愛に充ちて微笑んでおられます。

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